2007年4月21日土曜日

夏の読書感想文

2006年06月12日(月)投稿

週末はDVDや本で「1人の週末」三昧。 感想を忘れないために,自分のために書いてまふ。

***********

・『親しさのコミュニケーション』中山晶子・著 2003年 くろしお出版 ISBN 4874242715 日本人同士・日本人と日本語学習者(外国人)という2つのペアの会話の分析を通して,ある期間の間にどういうプロセスで人が親しくなって行くか考察し,人間の「親しさのコミュニケーション」がどういうものかモデル構築しようとする研究の書。

************

「人と親しくなりたい」という感情は,人間であれば必ず持つ(持ったことがある)感情ではないだろうか。動物だって,他の個体と親しくなりたいと思い,そういった行動をとっていると思う。しかし,必ずしも親しくなるのは楽ではない。煩わしく感じるときもある。誰かといたい欲求と1人でいたい欲求があるからだ。 また,親しくなればそれで安泰ではない。「親しき仲にも礼儀あり」で,親しいあまり,つい相手に甘えて自分を出しすぎると相手を傷つけることもある。→「親しい人とのコミュニケーションは実は難しい」と筆者は言う。どう難しいのか? ①親しい人とのコミュニケーションは直接行われることがない。「いま僕達は親しいよね」などと確認することがないということ。たとえば,間接的に示されるので,誤解が生じやすい。(例:今まで親しかった人が急に改まった言い方になったり,逆もしかり。) ②親しい人とのコミュニケーションは意識して学ぶことがない。生まれてから家族とのコミュニケーションの中で学んでいくものだということ。筆者は書いていないが,そういうコミュニケーションを学びにくい家庭環境もあると思う。そういう環境で育った場合は,親しさのコミュニケーションが十分身につかない可能性もある。 ③親しさは変動する。家族との親しさも変動するし,友達,恋人との間でも変動する。あるときには適切だったコミュニケーションが,別のときには適切ではなくなるということには気付きにくい。 そこで,親しさをどのように言語行動で示すかを研究するのが本書だとのこと。

************

今の自分にとって興味深かったのは,日本人と外国人とのコミュニケーションについての分析。 これは自分が日本語を教えているからではなく,外国人としてスペイン語でコミュニケーションをする際にも重要だ。 ●外国人のコミュニケーションのペースに合わせる 外国人は理解できなかったり,理解できても言葉が見つからずになかなか応答できないことが多い。日本人は相手のペースに合わせて待たなくてはいけない。 ●多くを説明しないといけない 外国人は,日本人が当たり前のことでも説明をしないといけないことが多い。ここで説明を面倒くさがると,外国人としては気遣いがしてもらえなかったと感じ,親しさを示されていないと感じることになる。 →外国人を日本人の集まりに呼ぶときは要注意だ。外国で寂しいだろうと気遣ったつもりで日本人ばかりの集まりに呼ぶと,周りは日本語ばかりなので,日本語を理解できない・日本語にすばやく反応できないという外国人の場合,余計に疎外感を感じることになる。また,今まで親しかった日本人の友人も,他の日本人と話したりするため,外国人である自分にはあまり構ってくれない。今まではいろいろ説明してくれたのに,このような場では日本人同士の会話をすべて説明してくれるわけではない。つまり,相対的に説明量が減る。しょうがないのだが,これも外国人にしてみれば,疎外感を感じる要因になる。 →外国人にしてみれば,これは強いストレスの要因になる。自分も,スペインに来てすぐのころ,ランチに一緒に行こうと誘われたことがあった。行ってみたら,みなスペイン人ばかりで,スペイン語のみの会話。たまに英語で自分に説明してくれるという感じ。みんながスペイン語で話すのは普通のことだということは分かる。しかし,言語的弱者としては本当に居心地の悪い空間。それ以降一緒にランチに行くことはしなくなった。これだけではなく,現地の人と結婚した女性が,現地人夫の友達が集まったパーティーや夫の親類関係の集まりで孤独を感じるということは,海外在住者からもよく聞く。 →もちろん,外国人も言葉の習得に勤しむ必要がある。ただ,すぐにできるようになるわけではないし,言語的強者が,常に気遣いをする必要がある。自分の今の立場を考えると,言語的にどうしても弱者になる。上の二つをしてくれる人と知り合うのはとても難しい。とても辛抱強くないとできないことだからだ。

************

この本は日本語研究の専門書。だから,日本語の研究に馴染みが無い人には読みにくい。しかし,内容はすべての人が知っていていい内容である。著者には,一般向けの出版を期待したい。

0 件のコメント: